前の大繁栄は音を立てて崩れてゆきます。人間の心の介在をいっさい許さずただ非情な資本の論理だけで動く虚構経済には、その国の人情味あふれる特徴的な国民性がかえってあだになってしまうのです。「腹を割って話せば必ず理解し合えるはずだ」では、どうしようもないのです。また帝国主義的経済競争に一番遅れて参入したその国は、かんじんかなめの蓄積資本力が決定的に不足しているのです。を忘れ身を粉にして働きづめに働いてためた血と汗の結晶を、それこそあっという間に根こそぎ奪い取られてしまうのです。も、それはさすがにこたえます。親子二代あるいは三代にわたって、人生のすべてをかけて営々として積みあげてきた努力が、一瞬にして水泡に帰してしまうのだからです。悲惨な結末になってしまいます。不慣れな虚構経済にうかうかと手を出したその国は、半世紀余りにもわたって寝食いかなる困難も、持ちまえの楽天性と団結力で不思議に乗り越え続けてきた彼らに激しい脱力感と深い絶望感が国中をおおい、生きるべき目標を失った人々が、ただ 162
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